浮き沈みを楽しめる人が好き

右肩上がりの人間には基本的に興味がない。ステレオタイプな「成功者キャラ」というのに収まってしまって、話に深みも面白みもないからだ。

好きなのは「人生の浮き沈みを楽しめるキャラクターの持ち主」である。どん底に落ちても絶望せず、その状態で得られる最大限の「楽しさ」を求めるような人間に惹かれるのである。

80年代に「少女小説の女王」と呼ばれ、時代の寵児となった「花井愛子」という作家サンがいる。その後、親族トラブルを発端に経済的危機におちいり、ついには自己破産にまで至ってしまったが、それでも人生を投げ出さず、他人からは「落ちぶれた」とされる暮らしもそれなりにエンジョイしている。

僕はイケイケドンドン時代の彼女には全く関心がなかったが、凋落後に出された単行本は面白く読ませていただいた。「中途半端に血の繋がった間柄の厄介さ」だとか「現行法下における相続制度のいびつさ」なんかがよく判って興味ぶかかったが、それ以上に「暮らしぶりの落差」を淡々と綴っているところがイイですな。

花井氏は複数のペンネームを使いわけて毎月数冊もの文庫本を出し、それがまたバンバン売れていたのだから、印税収入はどれほどのものだったのか。まさしく彼女は少女世界のカルチャースタアだったのである。彼女の作り出した少女小説の作法は多くの新人作家たちが真似したものだった。

とはいえ、ずっと云っているように、その頃の花井氏の仕事ぶりに興味は一切興味はなかった。「貧すれば鈍する」というコトバがあるが、金を持ちすぎても人間はつまんなくなるのである。花井氏は「女王」の座から降りたことによって作家としての味わいがグッと増した。やっぱモノカキはどこか欠けてないと面白くないやネ。

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