誰が「本」を殺しかけてる?

90年代半ば、「ブックオフ」を筆頭とする新古書店というのが台頭してきた時、「本が売れなくなってきているのはあいつらのせいだ」と語る出版業界人がいた。そうした人々は2000年代以降、ますます本が売れなくなってきた理由を「インターネットが悪いんだ」としがちである。

確かに雑誌・書籍が読者に行き渡る手段が「新刊流通」しかなくて、テレビでは伝えない種類の情報が「活字媒体」でしか入手できない状況がずっと続けば、出版業界がここまで追い込まれることはなかったろう。だからギョーカイの方がブックオフやらインターネットやらを敵視し憎悪する気持ちも判らなくはない。

ただし、アタリマエだが本が衰退していった理由というのはそれだけではない気がする。現状を招いた最大の理由は「面白い本が少なくなった」からだと僕は思うのである。バブル期には大手出版社の雑誌広告費が膨れ上がり、「1冊も売れなくても黒字」なんてケースも珍しくなかったそうだが、思えばもうその時点で本の衰退は始まっていたのかもしれない。

「売れなくても黒字」というのは極端な例だが、「何でもいいので出せば必ず一定数売れる」とかいう雑誌はかつては珍しくはなかった。「代替メディアがない」という状況に「読者の惰性」が合わされば、そういう状況は容易に生まれるのだ(第一期『薔薇族』も、そうした負のスパイラルに陥っていった感が強い)。

とはいえ、それは「雑誌(およびその作り手)を甘やかすこと」にしかならず、その甘やかしが「コンテンツのパワーダウン」を招く。そうした状況に居心地の悪さをおぼえるタイプの制作者ならばいいんだけれど、人間というのは基本的に「甘えたがり」なので、なかなかそうはいかない。結果、放漫経営ならぬ「放漫編集」におちいってしまうのである。

「本を売れなくした犯人」を捜したところでせんないことである。ひとつ云えることは、「もはや出版ビジネスをかつての規模に戻すことは不可能であろう」ということだ。出版社じたいは「出版以外のセクションを拡充させる」ことによって収益を伸ばすことができるかもしれないが、それはもはや「出版社」とは云えまい。

本はやっぱり、一にも二にも「コンテンツの魅力」で勝負していくものであろうと思う。国民の知的好奇心(あるいは知的虚栄心)が衰退の一途をたどっている今、たとえ新古書店やインターネットがこの世から消え去ったとしても、かつての賑わいを出版界が取り戻すことは難しいと思う。

だからもう、「ビッグビジネスとしての出版業」という幻想はいいかげん捨て去って、「地に足のついたレヴェルでの本作り」にシフトチェンジしてみたらいいと思うのだ。純粋に「売り上げ部数」だけで勝負し、「つねに緊張感をもった本作り」をしていけば、出版の未来にも何らかの光がさす気がする。

・・・まァ、これまで云われていたような「エスカレーター式で叶う8ケタ年収」なんてのは幻と消えるだろうが、そんなのはハナからおかしな話なのだ。本作りなんてものは「本を作らないと生きていけない」ような特殊体質の人間だけが関わっていけばイイ世界なのであるヨ。

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