「荻窪」通れば思い出す

僕が上京した最初に住み、学生時代の4年間を過ごしたのが杉並区の「荻窪」である。ここは今でも頻繁に訪れるのだが、そのたびに当時のことを思い出す。サイフの中に「100円以下」しか入っておらず、文庫本1冊を買うか買うまいか書店内で1時間も迷ったりした時代のことである。

とはいえ当時はそんな状況を「つらい」とも「ミジメだ」とも思っていなかった。学校のビンボー仲間と「金がないなりの楽しみ方」を研究してはダラダラしており、まさに落語の「長屋の花見」を地で行くような毎日をすごしていたのだ。週末ともなれば僕の四畳半のトイレ共同アパートに5~6人も集まってビンボー宴会を繰り広げ、ひょっとしたら「あの頃が人生で一番楽しい時期だったかもしれない」とすら思えてくる。

今では僕も「文庫本を躊躇なく買える」程度には稼げるようになり、「今日は昼飯を誰と誰に分けてもらおうか」とか考えなくても良い身分にはなれた。けれども時折それが「なんだか空しく思える」ことがシバシバあったりする。僕は基本的には、シタリ顔で「金さえあれば幸せってモンじゃないよネ」とか云うような奴には「ケッ、偽善者が」とか思う男なのだが、この件に関してだけは「金さえあれば幸せってモンじゃないよネ」と云いたくなってくるのでありまする。

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