東京脱出バナー

東日本大震災を機に「東京を離れよう」と決めたはいいが、具体的に「どこへ移住するのか?」と考えだしたら、これが全然決まりませんでした。

雪が大嫌いなので「積雪のない場所」、免許を持ってないので「クルマなしでも暮らせる場所」等の条件はあるんですが、その程度のものをクリアできる土地なんて日本中にいくらでもあります。
それに加えて「ウチは天災リスクが低いよ」とか「こっちは気候がいいよ」みたいなアピールもアチコチでされてるもんだから、「日本全国どこでも」というザックリした前提だと目移りしちゃって、いつまで経っても決まりゃしない。

そんなわけで、2011年に「脱・東京だ!」と決めていながら、ズルズルと5年も過ぎてしまったわけです。

ところが先日、「実家の母の具合が悪くなる」という予想外の事態が発生しました。
これによって、移住地選択の条件に「実家に顔を出しやすい場所」という重要項目が加わりました。

「親が健康をそこなう」というのは不幸なことではありますが、俺は「物事を悪いほうには受け取らないタチ」なので、今回のことも「天の啓示だ」と考えています。
物理的制約が課せられたおかげで、移住先の範囲グッと狭められたわけですから。
何より幸いだったのは、母のことを知らされたのが「移住前」だったことです。
もしも日本の端っこあたりに移り住んでしまった後で知らせがもたらされたら、果たしてどうなっていたことか……。
簡単に実家へ顔出しができない状況に、さぞ悩んだことでしょう。
そういう意味では、「とても良いタイミングだった」と思うわけです。

……え? 「結局、どこに移住するのか」って?
はい、実家のある「静岡市」と「東京」の中間あたりです。
駅で言えば、東海道線の「小田原(神奈川県)」から「函南(静岡県)」の間。
両駅の頭文字をとって、俺は「小函(こばこ)エリア」と呼んでます(そのあたりに行けば、下の画像のように結構な景色が拝めます)。

湯河原

「でも、その辺りって地震リスクがでっかい地域なんじゃないの?」
こんなことを言う人もいますし、まぁ実際、震災ハザードMAP上は「要注意エリア」です。

しかしですね、火山国(=地震国)であるわが国に、果たして「絶対安心な土地」なんてあるんでしょうかね?
一般に「地震リスクが低い」とされている県はありますが、それは単に「これまでたまたま安全だった」だけに過ぎないのかもしれません。
「この先もずっと安全が保障されているわけではない」ですし、近年の被災状況を見るにつけ「絶対に地震が起きない場所なんてものは日本国内にはない」という思いがいっそう強まります。
実際、ずっと「震災リスクが低い」とされてきたことが仇になったケースもあるのです。

2016年10月9日放送のNHKスペシャル『あなたの家が危ない』では、同年4月14日の「熊本地震」で発生した「想定外の住宅被害」についてリポートしていました。
あの地震では、最も安全であるはずの「耐震基準を満たしている築浅マンション」が壊滅的な被害を受けたりしたそうです。

そこには「地域係数」というものが大きく関わっているといいます。
地域係数とは「地域ごとの耐震基準を決定する際の目安」のこと。
国内の「地震が普通に発生しやすい」とされている地域を「1・0」とし、「そこと比べて揺れやすいか、揺れにくいか」で数値が決定するものだそうです。

熊本の場合は「県内全域にわたって地震が起きにくい」とされていた為、地域係数が「0・9」や「0・8」と低めに設定されており、「1・0の地方のマンションより鉄筋の量などが少なくても良かった」といいます。
その結果、「県の基準をきちんと満たしているマンション」であるにもかかわらず、「人が住み続けられないほどに損壊してしまった」わけです。
熊本のような「地域係数が低い市町村」というのは全国に700以上あるそうで、自分の住んでいるところの基準がどうなっているのか、一度調べてみるべきだと、番組では言っていました。

番組では他に、「1階が2階部分に押し潰されてしまった築浅戸建」というのも紹介していました。
こちらの場合、1階がひしゃげてしまった理由は「直下率の低さ」だったそうです。
直下率とは「上階部分と下階部分の柱の連続性」に左右されるもので、「上階の柱と直結している下階の柱」の数が多ければ多いほど直下率が上がります。

ところが最近は、デザイン性(オシャレ度)を優先するあまり、「上と下で間取りが極端に違っている家」というのが増えているそうです。
前述の倒壊した家の場合は「1階部分に広いリビングスペースを取った」せいで柱の本数が不足し、揺れた際に「上階の重みを支えきれなかった」のだといいます。

そうそう、近年新築されるマンションの大きな売りになっている「免震装置」というのを御存知ですか?
「地震の揺れを、土台部分に設置した巨大なゴムが吸収し、震動リスクを軽減する」というシステムのことをいいますが、番組ではその「盲点」も指摘していました。
この装置を導入していた阿蘇市の病院では「システムの要であるゴムの変形」が認められたというのです。

じつは免震装置には「ガタガタと小刻みに揺れる『短周期地震』には強いが、ユラ~リ、ユラ~リと長めに揺れる『長周期地震』の揺れには弱い」という弱点があるのだそうです。
熊本を今回襲ったのは、長周期地震であった為、「ゴムが横に引っ張られて変形し、ビルが大きく揺れてしまった」のだといいます。
もちろん、メーカー側もこの弱点を放置しているわけではなく、すでに「新素材ゴムを使った改良型免震装置」を開発しているそうですが、まったくもって人間と天災との攻防戦には際限がない感じです。

話を本筋に戻しますが、このように「地震リスクが低いとされている地域だから安全」とは限らないわけです。
自分は「地震県」と呼ばれる地域で生まれ育った人間だからよく分かるのですが、常日頃から「油断するなよ」と言われ続けてるところのほうが、じつは色々と準備ができていて良かったりします。

それは、「無病息災よりも『一病息災』のほうが良いのだ」という理屈に似ています。
「なまじ無病だったりすると健康面におごりが生じて不摂生になりがちだが、何かひとつ持病があると生活全般に気を配るようになるので、結果的にそっちのほうが長生きしたりする」ってことですね。

また、俺は新しいことを始める前、山のような資料を集めて精査するんですが、最終的に決断を下す際には「自分の直感に従う」ことが多い。
だから、今回もきっと「世間の風評」は参考にはするものの、そこにあまり左右されることはないでしょう。
「現地に行ってみて、『ここに住みたい!』と素直に感じられる地か、どうか」で決定するだろうと思います。

世の中には、何かを始めようとする際に「できない理由を集める人間」と「できる根拠を探す人間」がいますが、俺はあきらかに後者ですね。
『薔薇族』を継いだ時なんてノープランもいいトコで、できる根拠を集めることすらせず、勝算ウンヌン一切無視の状態で「え~い、とりあえずやったれ!」となりました。
「下手な考え、休むに似たり。ウダウダ考えてる暇があるなら、とりあえずやってみろ!」
こんな感じでやりだしましたが、まぁソレナリに続けてられるので結果オーライかな、と。

脱・東京も、そんな感じでやっていければいいんですけど、ね。

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