東京脱出バナー

移住をするにあたって「どの場所に住むか」が重要な要素であることは勿論ですが、「どんな家に住むか」も重視すべきポイントです。
地震に遭った時のことを考えると、やっぱり「できるだけ揺れのダメージを受けにくい家」にしたいところですね。

俺の考えるそれは「小さく、軽く、低い家」です。
集合住宅のような「大きく、重く、高い家」は、揺れの力と家自身の重みが合わさって、かなりの負荷が生じてしまいます。
だから、可能ならば「こじんまりとした平屋」に住みたいと思うわけです。

広さもそんなになくて構わない。
極端なハナシ、自分ひとりで住むだけなら「四畳半一間」だって構わないと思っています。
四畳半は「およそ7・4平米」ですが、俺の場合は余分な本さえ処分できたら、それくらいあれば十分なのです。

今回の移住の目的は「人をいたずらに消耗させる東京から距離を置く」ということだけではありません。
「30年がかりで肥大化してしまった生活環境の改善」という意味合いも大きいのです。
それは「縮小」というより「適正化」ですね。
室内を空っぽ寸前まで持っていく過激派ミニマリストのように「やみくもにモノを減らしたい」わけではなく、「必要なモノだけを厳選してそばに置く」ようにしたいんです。

これはたぶん俺だけの話ではないと思うんですが、齢を重ね、居住空間が広がるにつれて、家財道具というのは知らぬ間に増えていきがちなものです。
そう、ホントに「知らぬ間に」なんですよ!
意図的に「増やそう」としたことなんか一度もないはずなのに、居住空間の拡大に伴って「知らぬ間に」持ち物が増していく……。
これはまさに世界七不思議のひとつに挙げたいミステリー現象で、「家のどこかに物欲の妖精でもいるんじゃないか?」と疑ったこともありました。

今でこそ、増えすぎた荷物に押し潰されそうな俺ですが、かつての家財量はじつにささやかなものでした。
18歳で上京して最初に住んだのは、杉並区荻窪の四畳半アパート(トイレ共同・風呂ナシ)。
そこで4年(1983~87)暮らし、その後、渋谷区恵比寿に移って6年(1987~1993)住んだのですが、こちらもやはり「トイレ共同・風呂ナㇱの四畳半」でした。

恵比寿のアパートは、現在の「恵比寿ガーデンプレイス」の前の道を5分くらい歩いたところにありました。
「そんな一等地に四畳半のボロアパートが!?」と驚く方も多いでしょうが、現在の恵比寿と当時の恵比寿とはまったくの別世界だったんです。

俺がいた頃は、バブル期名物の「地上げ」によって街のいたるところが食い荒らされていた時期でした。
近所にろくな店がなかったため、買物の際には仕方なく隣の「目黒」まで行ってたくらいです。
そのかわり銭湯が何軒もあって、まだ「ビンボー人も多く住まう下町」といった風情にあふれるエリアでした。
ちなみにガーデンプレイスは、ちょうど俺が恵比寿を出る頃に工事が始まりました。

それはサテオキ。
「ウソだろ!?」と言われることが多いのですが、恵比寿での6年間、我が家は「冷蔵庫ナシ生活」でした。
それは「冷蔵庫を買う金がなかった」からではなく、「冷蔵庫に明け渡すだけのコンセント数がなかった」からです。
部屋についているコンセントはわずか「2つ」で、それはテレビやらビデオやら留守番電話やらラジカセやらワープロやらでふさがっていました。

「さぞやお辛いことでしょう」と可哀想な人を見るような目を向けられたこともありましたが、残念ながら冷蔵庫ナシ生活は「全然」と言っていいほど痛痒のないものでした。
「食料は、必要な時に必要な分だけ買って来て、残さず食いきる」
この原則さえ守れれば、じつは冷蔵庫はなくても困らないんです。

実際にやるまでは「夏場に冷たいものが飲めないのは辛いかな……」みたいな不安もあったんですが、それは取り越し苦労だとすぐに分かりました。
喉の渇きは真夏であっても水道水で癒せるし、アイスだって買ってきて溶ける前に食べればノープロブレム。
要するに「食料を保存ずる」という概念さえ持たなければ、冷蔵庫なんて「なくても困らない存在」なわけですね。

冷蔵庫がないくらいですからクーラーなんか持っていようはずもなく、自宅内の涼をとる器具はただ「扇風機」のみ。
でも、もともと冷房嫌いな家に育ったので、こちらも不自由はありませんでした。

俺が生まれて初めて「クーラー付きの家」というのに住んだのは「30代になってワンルームマンションに入居した時」ですが、今でも冷房はなるたけ使わないようにしています。
そこには「夏は暑くて当たり前じゃい!」という昭和オヤジ的な強がりも働いてますが、それ以上に「冷房を使う=室外機が街をいっそう暑くする=ヒートアイランドが増す」という不快な連鎖に加担したくない、という気持ちが強いんです。

でも、マンションというのは「部屋の気密性を極限まで高め、室内の温度・湿度を電気的に調整する」仕組みの住宅なので、木造アパートのように「扇風機だけで乗り切る」のは至難の業です。
だから、「クーラーを使わざるをえない季節」には仕方なくスイッチを入れるんですが、やはり気分のいいものではないですね。
毎年、夏が来るたびに俺がユーウツな気分になってしまうのには、そういう理由があるんです。

俺が「こじんまりとした平屋」に憧れるのは、「エアコン使用ありきのマンション生活」から脱却したい、という思いも大きいですね。
窓を全部開けて、打ち水とかして夏を乗り切れるようになったら、クーラーを使いだして以降、ずっと抱えていた罪悪感からようやっと解放されそうです。

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